
お知らせ
未分類
お墓のジェンダー

先日、世界経済フォーラムで2025年度版「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」が発表され
ました。
日本は148ヵ国中118位、先進7ヵ国(G7)では断トツの最下位です。
G7各国のジェンダー・ギャップ指数の推移のグラフを見ますと、日本のその低水準さが恥ずかしい
ほど目を引きます。
特に経済・政治の分野での遅れが著しいのですが、諸外国のレベルまで追いつくのにはまだまだ時間
がかかりそうです。
実はお墓もジェンダー・ギャップが顕著に表れている風習のひとつと言わざるを得ない側面があり
ます。
先祖代々のお墓を継ぐ際、ご長男がいれば、ほとんどのお宅は迷うことなくご長男がその後継者になる
と思います。
新しくお墓を建てるとしても、やはり旦那さんかご長男のお名前を建立者として刻むことが多いでしょ
う。
現代において、これは取り立てて男尊女卑を意識してというよりも、お墓、ひいては家族のあり方を
形成した過去の法律の名残であると言えます。
近代国家を目指した明治時代、戸主であるお父さんが家族を管理する強い権限を持つことを明確化した
明治民法が公布されました。
江戸中期までは村などの共同体としてのつながりの方が優先されていましたが、この法律によって
家族が統治の最小単位として位置づけられました。
もちろんお墓も論外ではありません。
お墓について明治民法には、「系譜、祭具及び墳墓の所有権を承継するは家督相続の特権に属す」との
記述がありました。
「家督」、つまり「実長男だけがお墓を継ぐ権利があるよ」とこのとき法律としてはっきりと決められ
たのです。
その後日本は太平洋戦争に敗れ、GHQ統治の下、女性の地位向上・男女平等を強く反映した新憲法
(日本国憲法)に変わり、明治時代に規範とされた「お父さんが絶対!」という制度は廃止され、家族
のあり方が大きく変化しました。
そんな中、1948(昭和23)年に制定されたお墓の法律である「埋墓法」なのですが、その内容は
なんとなんと、明治時代の法律と大して変わっていなかったのです。
そこには、「慣習に従って先祖の祭祀を主催すべき者がこれを継承する」と、なんともあいまいな表現
が記載されています。
「慣習に従って」となると、結局やっぱり「実長男が継ぐ」ということに他なりません。
戦後様々な形で成長を遂げてきた日本ですが、ことお墓に関しては、明治時代からの法律の名残を色濃
く残しているのは当然と言えます。
最近ですと新しくお墓を建立する際、建立者名をご夫婦連名にしたり、また旦那様が先立たれた場合は
ご長男でなく奥様が建て主となったりと、お墓事情も少しジェンダーレスの方向に進んでいるように
感じます。
しかしそもそも、子供が女の子しかいない、お墓の継承者がいない等、昔のように「実長男に」などと
言っていられない現状が少なくありません。
私の家も女3人姉妹ですので、近い将来お墓についてみんなで話し合いを持たざるを得ない状況です。
お墓がジェンダーだジェンダーレスだの話を通り越して、今はこれと定まった埋葬方法がなくなってき
ているという実情が見て取れます。
これまで何度かお墓の大転換期を迎えてきた日本ですが、今まさに新たな転換期の真っただ中に
いる・・・
お墓のあり方・埋葬方法に迷われている多くの方々がそう感じている昨今ではないでしょうか。