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亀趺≠亀

先日、亀の日だということで亀趺墓についてご紹介しましたが、実のところあれは亀ではありま
せん。
せっかくの亀の日に水を差すのも無粋だと思いまして、その日は亀だとしかご説明しませんでしたが、
正確に申しますと亀趺の正体は“贔屓(ヒイキ)”であります。
「先生はあの子をヒイキしている!」のように使用される“贔屓”の語源となった生き物です。
贔屓は中国・宋の時代に生まれた伝説上の生き物で、9人(匹?)いた龍の子供のひとりです。
姿は亀に酷似していて、非常に怪力で重いものを背負うのが得意とされていたため、石碑などの台座と
して模られてきました。
しかし贔屓の伝説が出来る以前、後漢時代から石碑の台座に亀は使われておりました。
古代中国の神話では、大地は大きな亀の背中で、人間たちを乗せて亀がゆっくりと歩くに従い、太陽が
西から東へと移動するという、一種の地動説が唱えられてきました。
亀はそれほどの力持ちの動物であると認識されていたため、「霊亀」と呼ばれ、重要な石碑の台座と
して使用されてきたようです。
なので“贔屓”は元はやっぱり亀なのでしょう。
贔屓伝説が出来たのは皇帝の権力を明確にする目的のなか生まれたと見られるため、もともとあった
亀の存在に新たな概念を加えたものが“贔屓”であると考えてもいいのではないでしょうか。
じゃあ結局亀なんかいとお思いかと存じますが、日本に亀趺が伝わったころにはもう贔屓伝説が確立
していましたので、日本に見られる亀趺はみんな“贔屓”のつもりで作成されたものとなります。
なので日本で亀趺を見かけましたら、それは亀ではなく“贔屓”であると断言して間違いなかろうと
思われます。
ちなみになぜ“贔屓”が「気に入った特定の人を優遇する」意味として使われるようになったかといい
ますと、怪力で大きな力を発揮する贔屓の特性から、他人のために援助の手を差し伸べるというような
意味に広がっていったようです。